齋藤 周 Artist's STATEMENT

幼い頃に他者のなにげない仕草に関心を持ち、自然とその仕草の元にある、目には見えてこない情感をいつも感じ取ろうとしていました。それは現在も変わらず、人という存在を知ろうとする姿勢として私の制作の起源になっています。

自宅にあるたくさんの絵画が並ぶ父のアトリエから、心に感じたイメージを自由に表現という形で出力できるという事に気づかされました。中学生でカメラを手に取り、身近な人物を撮り始めた事をきっかけに、何気ない日常の中にある他者の想いを視覚的に再現しようと試みました。感じ取ったニュアンスを忠実に色と形で表現する手だてを模索した結果、20年ほど前から、私は人の存在をテーマに、絵画を制作するようになりました。 制作においてインスピレーションとなるのは、変化に満ちている他者との関係性です。その記憶を紡ぐことは、日々継続され、体に堆積されてゆきます。それは毎日顔を合わせる他者との会話から、交差点に集まってくる見ず知らずの人たちの交錯する一瞬の時間まですべてに及びます。

それは日々の営みをみつめ、生活を支えている、いつもは注目していない場所に光を当てるといった視点です。モノで例えると、日々使用している机の足と床の部分です。私たちが仕事を進める手助けをしている机の足がしっかりしていなければ、机はおろか、仕事になりません。作品では、この視点を自分と他者との関係性に置き換えています。この視点から人と人の間で多様に積み重なり形づくられた日常を見つめ、イメージを拡げていきます。時には自分の中に堆積した他者との記憶を取り出し、画面に組み込んでいきます。その作業の先に完成に向けた明確な形と色が見えてくるのです。 素材はキャンバスや木製パネルに、油彩とアクリルで描いています。絵の具の色は無限で、イメージが可視化された時に自由に加筆できるからです。

当たり前と思える日常は、自分にまつわる他者の存在があってはじめて成り立つものです。その当たり前がいつなくなってしまってもおかしくない中で、人を信じ、共存しているという普遍的な人本来の感覚を忘れたくありません。 私にとって作品を描いてゆくことは、自分が生きている時間に向き合う方法として、生き方や必要に応じて、際限なく如何様にも変化していくのだと思います。